琉球新報 2004年12月25日
【石垣】 約40年前の全国酒類調味料品評会(東京農業大学主催)に出品した泡盛47本が同大学の酒蔵から見つかり、そのうち酒造元が判明した「八重泉」が24日、石垣市の八重泉酒造(創業1955年、座喜味盛二社長)に里帰りした。実際にその泡盛を造った座喜味盛光会長(80)は「非常に懐かしい。息子が外国から帰ってきたようだ」と話し、いとおしそうに酒瓶をなでた。
東京農大では1961年から品評会を実施している。見つかった泡盛はすべてオリオンビールの瓶に詰められており、ほとんどが貯蔵庫の高湿度の影響でラベルがはがれている。わずかに判読できたのは「八重泉」と「瑞泉」「玉友」「山川酒造」「春雨」だけ。
里帰りした「八重泉」もラベルがかすれているが、盛光会長自ら「末広がりになるように」との願いを込めてデザインした「扇」と赤いひょうたんが確認できる。瓶の口には酒税支払い証明用の青いキャップが張られている。
お菓子製造から酒造に転換した盛光会長は「当時は瓶を買う資力もなくビール瓶を回収して泡盛を詰めていた。3回目の品評会に初めて出して進歩賞をもらい、それで泡盛造りにも自信がついた」と当時を振り返った。盛二社長も「創業以来のものが手に入り、宝物にしたい」と感激していた。
「八重泉」を持参した東京農大の小泉武夫教授は「40年以上も前の古酒ということになる。中身はまったく変質しておらず、ものすごく丸くなっている。瓶のなかでも醸成が可能だということだ」と話している。
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